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逆境にも負けないフットワークの軽さが強み。食を通じて地域と、人とつながる料理旅館。

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おやど文乃家(ふみのや)

目次

津山を訪れる人々を迎え続けてきた料理旅館「おやど文乃家(ふみのや)」

県内でも有数、北部では随一の都市規模を誇る岡山県津山市には、ビジネスやスポーツ施設での合宿など観光以外の目的で訪れる人も少なくありません。

 

このため市街地には、JR津山駅付近を中心に新旧さまざまなホテルが立ち並んでいます。

 

そんななかで1950年頃から、市街地中心部にて団体客をメインに津山を訪れる人を受け入れてきた料理旅館があるのをご存知でしょうか。

 

旅館の名は「おやど文乃家」。

 

市外・県外から来る人をターゲットとした業態であるため、これまでは地域住民と関わる機会が少ない施設でしたが、コロナ禍を受けて変化があったと言います。

 

おやど文乃家の看板。JR津山駅から車で10分ほど、周囲にはスーパーやコンビニ、飲食店の多い便利なエリアに建つ

 

 

今回は、おやど文乃家を共に営む吉間俊典さんと吉間早苗さんご夫妻にインタビュー。

 

新型コロナウイルス感染症の流行を受けて生まれた「食」を通じた地域との絆、また逆境を乗り越えての今後の展望などについて、料理旅館の歴史も踏まえお伺いしていきます。

 

 

創業およそ70年の宿を切り盛りするのは、仲の良い二代目夫婦

二人並び、満面の笑みでインタビューに応じてくれる吉間俊典さん(左)と吉間早苗さん(右)

 

 

― まず、こちらの料理旅館の歴史を簡単に教えていただけますか?
俊典さん:おやど文乃家は、1950年頃に僕の母が嫁いだ料理旅館です。当時は現在の津山税務署のあたり、出雲大社美作分院の近くに本館があり、独立して作ったのが現住所の文乃家で別館を名乗っておりました。現在は本館がなくなってしまいましたので、当館はおやど文乃家の屋号がのこる唯一の旅館ということになりますね。

 

早苗さん:お義母さんは当初、いまメインで使っている建物の隣にある家を買い取って別館とし、後にこの建物を建てたそうです。まだまだ戦後間もない時代に女性が代表として独立し、事業を成功させたわけですから、かなりのやり手だったんでしょうね。

 

― 現在は二代目として、息子夫婦にあたるお二人が旅館を営んでおられるのですね。

俊典さん:はい。僕はもともと証券マンをしていたのですが、2015年から旅館の手伝いに入って。当時はまだ母も現役でしたので、一緒に旅館の切り盛りをし始めたんです。

 

早苗さん:私はずっと専業主婦をしていたので、基本的に旅館のことはノータッチでした。3年間程は、小さい頃から親しんできたお菓子作りのスキルとJSAアイシングクッキー認定講師の資格を活かし、ひかり学園の作業所でクッキーづくりについて指導する仕事をしていたんですよ。でもある日、宿から出すお弁当のスペースにちょっとした空きを見つけて…。「そこ、空いとるがん。何か詰めたら?」と口を出したのが始まりで、宿の仕事にも関わるようになっていきました(笑)。

 

俊典さん:最初は弁当のちょっとしたスペースだったのが、段々広がってきて(笑)。気付いたら宿として出す食事、お弁当のほとんどに妻の手が入るようになっていました。もともととても料理上手な妻でしたので、ぜんぜん問題はなかったんですけどね。彼女自身が調理師資格を取得した後は、母が仕事を引退することもあって、当館からお出しする料理に関しては妻が取り仕切ってくれるようになったんです。

 

コロナ禍でのお弁当販売を機に深く結ばれた、地域との縁

 

― お母さまから受け継ぎ、夫婦で営んでこられたおやど文乃家ですが、新型コロナウイルス感染症の流行により大きな影響を受けたのではないですか?
俊典さん:はい、本当に。もともと当館は関西からゴルフに来られる団体客や、近くのスポーツ施設を利用し合宿をする学生さんの団体をメインのお客様としていたんです。あとは近隣で行う企業イベントに出す、お弁当の仕出しなども収入源でしたね。しかしコロナの流行で集まるな、動くな、家から出るなという状況になってしまって。合宿も企業イベントも実施することすら叶わなくなり、当館にお泊りいただけるお客様もゼロになりました。

 

早苗さん:そこで「このままではいけない、何かしないと」と考えて始めたのが、近隣にお住まいの方へのお弁当の販売です。この旅館の軒先と玄関で、初回は2020年の3月3日、お雛祭り用のお寿司を販売するところから始めました。以降は週に3~4日のペースで、コロナで大変な方への応援も兼ねた500円弁当の販売を数か月続けたんです。

 

 

おやど文乃家から販売するお弁当の一例。冷凍食品などの既製品は使用せず、若女将の早苗さんが一品一品丁寧に作っているとのこと

 

予約制で若女将の早苗さんが作られるオードブル。こだわりが強く、構想から完成まで3日かかるのだとか

 

 

また、お弁当の販売と並行して私のMaman F(ママン・エフ)としての活動にも力を入れていきました。Maman Fというのは、文乃家の頭文字をとって“文乃家のお母さん”という意味合いで付けた名前で、私が旅館の仕事に携わるようになってからは、お菓子の製造・販売やアイシングクッキー、練り切りの教室もMaman F名義で行ってきたんです。

 

 

 

早苗さんがMaman Fとして製造と販売、そして作り方の指導も行っているお菓子の数々。どれも非常に繊細で、芸術作品かと思うほど美しい

 

 

そうこうしているうちに主人が、自分も何かできることがしたいと模索を始め、気付いたら「オトンヤンニョム」を名乗り始めていたんですよ(笑)。

 

俊典さん:妻と一緒に行うお弁当の販売以外に、何か僕ひとりでもできることを始めたいと思って。2021年の7月から「オトンヤンニョム」の屋号でヤンニョムチキンの販売を始めました。タレのレシピは妻に考えてもらい、千本ノックの勢いで試作と試食を重ねて(笑)、本格的な販売を始めたばかりです。

 

― なぜ自身が製造・販売する商品を、ヤンニョムチキンに決められたのですか?
俊典さん:何を作ろうかなあと悩んでいたときに、妻からアドバイスをもらいました。2020年頃にはから揚げブームが来ていたと思うんですけど、専門店も増えているし、ただから揚げを作って売っても面白味がないよなあと。そんなとき、妻が助言してくれて。

 

早苗さん:主人は辛いものが好きなんです。普段の食事での七味唐辛子の消費量が半端ないくらいに(笑)。それでただのから揚げではなく、ヤンニョムチキンを売ればいいんじゃない?となりました。タレのレシピ作りこそ私も協力しましたが、あとは何もしていません。主人がお客様においしいと言っていただけるものをめざし、一人で何度もチキンを揚げて、いまの味と食感を作り上げました。

 

試食させていただいた、骨付きの「オトンヤンニョムチキン」。甘っ辛いソースの味と、骨からカリッと外れる身・皮の食感がたまらない

 

 

― お弁当やお菓子、ヤンニョムチキンを販売してみて、お客様からの反応はどうでしたか?

俊典さん:ありがたいことに「おいしい」と喜んでいただけました。そのお言葉通り何人かはリピーターになってくださり、さらに口コミも広がって、当館までたくさんのお客様が買いに来てくださったんです。なかには「イベントに参加してみたら」と声をかけてくださるお客様もいて、近所のマルシェや湯原温泉で行われたイベントへ出店するという経験もできました。本当に皆様のおかげです。

 

早苗さん:いつも当館からお出しするお野菜を購入している「高野お野菜市場」さん、パンやマフィンが人気の「7c」さん、pizzaを焼く友人などにお声掛けをさせてもらって、文乃家主催でマルシェを開催したこともあるんですよ。ここの軒先に各店の商品を出して開催したんですが、並んでいただくくらいたくさんのお客様に来ていただけました。あれはとっても楽しかったなあ。私たちっていままで、主に津山の外から来られる方に向けて料理やサービスを提供していたんですね。だから地域の方たちに自分たちのことを、味を知ってもらう機会が少なかったんだなと、一連のテイクアウト商品の販売を通して感じました。

 

俊典さん:新型コロナウイルス感染症の流行の影響を受けて追い詰められた結果でしたけども、こんな風に地域の方との新しい縁に恵まれたことは本当に良かったと思っています。

 

「オトンのヤンニョムチキン定食」の提供、通信販売も順次開始予定

― 本日はオトンこと、俊典さん自慢のヤンニョムチキンを試食させていただいていますが…テイクアウトの感じではないですね!?

俊典さん:そうなんです。これまでは予約販売を中心にテイクアウトで販売していたんですけど、これからは不定期ながら、当館で食べていただけるようにもしていこうと思って。テイクアウトされるお客様からも「ここで食べられたらいいのに」というお声をいただいていましたしね。週末は宿泊のご予約が入っていることもありますし、毎日は難しいですが、オトンのヤンニョムチキンをパッと食べて帰れる場を提供できればうれしいです。

 

SNSで予告し、平日ランチとして提供する予定の「オトンのヤンニョムチキン定食」850円。骨付きヤンニョムチキン3本に味噌汁、ごはん、漬物が付く

 

ヤンニョムチキンは、定食に付いてくる自家製の柚子胡椒やチーズパウダーで味変するのもおすすめ

 

― 定食の提供は、おやど文乃家の玄関スペースを活用して行われるのですね。

俊典さん:うちは旅館なので部屋はありますが、急いでいるお昼どきに上がっていただくのも大変かなと思って。玄関スペースだけでも最大でテーブルが3台、8名様くらいまでは入っていただけるので、こっちの方がいいだろうと考えました。

 

またテイクアウト、定食としての提供以外に、ヤンニョムチキンを冷凍しての通信販売も行う予定です。実はお客様から「ヤンニョムチキンを冷凍して、一晩冷蔵庫で解凍して冷たいまま食べたらおいしかった」というお声をいただきまして。そういう形でも楽しんでもらえるのか、とヒントをいただき、近日中に通販も開始することにしました。

 

― 購入方法と食べ方の選択肢が広がるのはうれしいです!ちなみに、定食とは別に用意されたこちらのパック入りのお惣菜は…?
早苗さん:定食だけでは物足りないという人のために、私が作ったおかずです。オトンのメニューがヤンニョムチキン定食の一種類なので、ボリュームを調整できるものがあればいいかなと思って。そのとき旬を迎える野菜をメインに使って、1パック300円で販売しようと考えています。ただMaman Fとしての講師業の仕事も続けながら作ることになるため、本当に申し訳なく心苦しいのですが、このおかずの提供も不定期になると思います。

俊典さんの定食提供の際、早苗さんが不定期で用意する300円のおかずパック。野菜中心でやさしいお味

 

 

俊典さん:ちなみに定食のボリュームは、ごはんやヤンニョムチキンの量でも調整できます!ごはんは値段の変更なしで大・中・小をお選びいただけますし、ヤンニョムチキンの本数はプラス150円で1本増しの計4本に、もうプラス100円していただければ計5本に変更可能です。ぜひお試しください。

 

自分達のペースを大切に、夫婦でさらに挑戦を続けていければ

知人に作ってもらったロゴを「元気が出る」というオレンジ色の生地にプリントしたのぼりを手に旅館の看板前に立つ俊典さんと早苗さん

 

 

― 旅館業、飲食業と日々忙しく、さまざまなことにチャレンジされているお二人ですが、今後の展望があればお聞かせください!

早苗さん:私としては、地域の大人が集まって楽しみを共有できる場を提供したいですね。実は11月から、主人と一緒に改装した旧館にてアフタヌーンティーを楽しめるMaman Fのサロンをオープンさせました。ただこれから、私はアイシングクッキーや練り切りを生徒さんに教えられる講師の育成とフォローにも力を入れたいと思っていて。合間を見てお弁当も作って販売したいし。だからやっぱり、月に3日くらい開けるのが限界になるとは思うんですけど、サロンを始めてからの生活に慣れてきたら、そういう大人が楽しめる場としてもサロンを活用できるようにもしていきたいです。ゆくゆくはそこで体の調子が整うランチとか、心が安らぐちょっとしたお菓子とお茶みたいなメニューも提供できれば最高だなあと思います。

 

 

俊典さん:僕としてはコロナ前までとはいかなくても、団体で宿泊されるお客様に戻ってきてほしいですね。具体的には7:3くらいのバランスで、旅館業とオトンヤンニョムなどの飲食業をバランス良く続けていければいいなと思います。妻にはしっかりと休む時間も持ちながら、やりたいことを頑張ってほしいですね。物事に没頭しやすいタイプで、やり始めるとつい頑張りすぎて、燃え尽きちゃう節があるので(笑)。2021年までの2年間は、皆さまのおかげで何とか困難を乗り越えてくることができました。今後も妻とともに僕たちらしく、フットワーク軽く挑戦を続けていきたいです!

 

 

同じ高校の先輩・後輩だという吉間さんご夫妻は、取材中何度もアイコンタクトを交わされ、コロナ禍で奮闘した日々を振り返りながら話をしてくれました。

 

大変な状況にも負けず、自分達がこれまでに培ってきた技術と味を武器に果敢に挑戦し、地域との絆やさらなる目標を見出されたお二人は、本当に格好良かったです。

 

現在はなかなか計画的に作るのが難しいと言う早苗さんお手製のお弁当やオードブルも、今後SNSで事前告知したうえで予約を受け、作れるようにしたいとのこと。

 

俊典さんのオトンヤンニョムチキン、早苗さんのお料理、サロン等の販売・予約状況については随時InstagramなどのSNSで発信されています。

 

こまめに情報をチェックし、予約の上でぜひご夫妻自慢のお料理を食べてみてください。丁寧に手作りされたその味に、あなたもきっと元気をもらえるはずです。

 

おやど文乃家 instagram

オトンヤンニョム instagram

MamanF instagram

ママンのサロン instagram


取材・文:灘岡もえ
取材日:2021年10月15日

 

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