[Uターン・Iターン・移住]
いーなかえーるは、岡山県北の
求人情報をご紹介します

岡山県北で求人広告をお考えの企業様

[Uターン・Iターン・移住]いーなかえーるは、岡山県北の求人情報をご紹介します

変わらぬ味と店主の個性が魅力。蒜山高原から全国へ、地域独自の食文化を発信する食堂。

目次

 

ひるぜんの焼きそばとから揚げのお店「悠悠(ゆうゆう)」

 

2011年の第6回B-1グランプリ大会で優勝し、一気に知名度を高めたひるぜん焼そば。

 

岡山県北の人にとっては懐かしく、他地域の人にとっては新しい味わいのひるぜん焼そばは、すっかり日本全国で知られる逸品となりました。

 

しかし一方では名前だけが独り歩きをし、地域の魅力と結びついて見られないケースも。
そんな状況のなかで、蒜山から全国へ地域が誇る「みそだれ焼きそば」の文化を発信し続ける、一件の食堂があります。

 

悠悠の外観。向かって左手が待合所、右手の建物横には数十台分の駐車場がある。

 

 

入口を入ると、複数のテーブル席とカウンターが見える。

 

 

奥には座敷席もあるので、小さな子どもを連れていても来店しやすい。

 

今回はその味に惚れ込み、関西の都市部からUターン転職した「悠悠」の店主・村岡誠介さんにインタビュー。

 

お店自慢の二大看板メニューや常連さん、地域への想いなどについてお話を伺いました。

「舵取りできる人生」を求めてUターン転職した、2代目店主

 

メニューを開き、自慢の焼きそばやから揚げについて説明をしてくれる村岡さん。

 

― まずはこちらのお店が誕生した経緯について、簡単にお聞かせください。

 

村岡さん:悠悠は妻のお母さん、僕から見て義理の母が2002年に創業した食堂です。もともとは子育てがひと段落した義母が、「悠々自適に食堂をやって暮らしたい」という思いで作ったお店です。娘夫婦にあたる僕たちが働くようになったのは2014年から。ゆくゆくはお店を継がせてもらうつもりで、僕たち夫婦と中学生と小学生、就学前だった3人の子どもたちと一緒に関西からUターンしてきました。

 

― 小さなお子さんも連れた家族でのUターン転職には、勇気がいったのではないですか?

 

村岡さん:そうですね。僕も妻も真庭市の出身ですが、地元へ戻るつもりは全くなかったので。家族みんな、ずっと関西で暮らしていくもんだと思っていました。初めて妻に「蒜山へ帰って、お母さんのお店で働きたい」と伝えたときは「もうちょっと考えてみたら~」と返されました…。後から聞いたところによると「言い出したからには多分帰ることになるんだろうけど、もうちょっと時間が欲しいと思った」そうです(笑)。でもいざ戻ると決めてからは早くて、数か月の間に僕の退職や子どもたちの転校、転居の手続きを進め、翌年度には蒜山へ戻って悠悠で働き始めました。

 

― 思いがけないUターン転職に至る、きっかけのようなものはあったのでしょうか。

 

村岡さん:僕は関西にいた頃、事情があって家庭で過ごせない子どもたちが生活する児童養護施設で働いていたんです。だから施設で暮らす子どもたちのことを思うと、辞める、子どもたちの前からいなくなるということは考えてなかったんですよね。しかし体を壊し、1か月ほど休職せざるを得なくなって。その休職期間中に今後の人生について考えたんです。蒜山へ一人で帰省し、リフレッシュのために悠悠でお手伝いもさせてもらいました。夜、一人で真っ暗な夜道を散歩したとき、満天の星空に息をのみました。その時、蒜山での暮らしが具体的にイメージできたんです。ネガティブなものではなく、田舎での商売や生活に可能性をはっきりと感じました。その後、よく考え抜いた結果、自分の人生において自分でかじ取りしていきたいと思い、Uターンを決意しました。

 

店主の村岡さんを癒した蒜山の山と自然の風景。取材当日はたくさんの蕎麦の花が咲いていた。

 

そして始まった、蒜山での試行錯誤の日々

 

― 実際にUターン転職し、悠悠で働き始めた当初はどんな感想を持たれましたか?

 

村岡さん:経済的には想定していたより大変かもしれない、と思いました(笑)。僕がここで働き始めた当時は既にひるぜん焼そばがB-1グランプリで優勝した後でしたから、観光客の方を中心にそこそこお客さんは来ていたんです。でも遠方から来られる方が多い分、天候や季節による客数の増減は激しいですし、値段設定もいまよりかなり安かったので…。お母さん一人では生活していけても、このままでは僕ら家族が食っていくのには厳しいなと。

 

悠悠看板メニューのひとつ「ひるぜんの焼きそば」。
※平日と土日祝日では、メニュー内容や値段が異なってきます。写真は取材時平日の内容。

 

― それは…大変な問題ですね。経済的危機に対し、どう対抗したのでしょう?

 

村岡さん:いろいろなことを試してきました。お母さんが好きに変えていっていいと言ってくれていたので。まずはSNSとお店のサイトを始め、単にお客さんが来てくれるのを待つだけでなく発信を行うようにしました。そして同時に行ったのが、メニューの改定です。いまは焼きそばとから揚げをメインメニューにしている悠悠ですが、当時はざるそばや丼ものとか、一般的な食堂のメニューが他にもあったんですよ。そこでオペレーションをより効率的にするため、人気の商品だけをメニューに厳選しようと思いました。

 

― メニューを絞り込んだ結果、現在の焼きそばとから揚げメインの構成になったのですね。

 

村岡さん:はい。焼きそばはもともと人気があったので、お客様の評価が高かったから揚げを前面に押し出しました。ネットで口コミをリサーチしていると「いままで食べたことなかったけど、から揚げ頼んだらおいしかった」という意見が複数見られたんですね。それで焼きそばとともにおすすめ品として、店内ポップでプッシュしていきました。すると徐々にから揚げへの評判も高まっていき、家庭料理である焼きそばを食べに来ない地元の人も「悠悠はから揚げもうまいらしい」と、お店に来てくれるようになりました。

 

悠悠の二大看板メニュー「ひるぜんの焼きそば(並)」と「とりのから揚げ(2切れ)」

 

 

ぶりり、じゅわりとした食感のから揚げは、ひと切れが女性の手のひらほどのサイズ。第7回のからあげグランプリ「西日本しょうゆダレ部門」で金賞も受賞している。

 

 

一時は外へアルバイトに行かなければならないかもと思ったほどでしたが、こうした「こちらから発信する、攻めのスタイル」での営業が功を奏したのか、現在ではかなりお待ちいただくこともあるほどお客さんに来ていただけていて。まだ天候や季節による変動は大きいですが、経済的には徐々に安定していきました。

岡山県北の「たれ」は、全国に誇るべき食文化だと思う

 

― いろいろな変革を行うなかで、味のリニューアルは行われなかったのでしょうか。

 

村岡さん:はい、レシピは昔から一切変えていません。悠悠の焼きそばは地元製麺所さんのモチモチの太麺をキャベツ、若鶏の肉とともにウチ独自の秘伝のたれで炒め合わせたもの。もともと蒜山には各家庭で好きなようにブレンドしたたれを使って、焼きそばを作る風習がありました。だから蒜山の各家庭に「その家の味」の焼きそばがある。悠悠の焼きそばは、お義母さんの作ったわが家の味です。僕もこの味が大好きですし、一定の評価もいただいているので、変える必要性を感じませんし、変えてはいけないと思っています。
お客様の立場にたったとき「いつ来ても同じ味が食べられる店」になるよう心がけています。

 

焼きそばは調理段階から、香ばしい味噌とニンニクの香りがたまらない。口に入れると辛みに似た香ばしい風味の後、味噌の甘味が感じられる絶品だ。

 

― 焼きそばと言えば全国的にはソースを使いますが、蒜山にはもともと文化として、みそだれを使う風習があったんですね。

 

村岡さん:そうなんですよ。僕たちの母も、この地域にお嫁に来て初めて目にし「これはおもしろい」と思ったそうです。だからこそ創業当初からメニューに加え、地域で初めて「ひるぜんの焼きそば」と命名しました。僕は真庭市南部の久世の出身ですが、たれ焼きそばの文化はありませんでした。
でも、地元民御用達の「若田のたれ」は馴染みありますし、津山のホルモンうどんなど、岡山県北には広くみそだれで調味する食文化があります。だから僕はこの地域のみそだれは、全国に誇れる素晴らしい食文化だと思っているんですよ!

 

― 悠悠を訪れる方たちに向けて、美味しい食べ方やおすすめの組み合わせを教えてください!

 

村岡さん:焼きそばとから揚げ、その両方を頼んでいただくのはマストですね。そこからさらに完成形に必要なのが、白いご飯です。甘辛いみそだれで作られた悠悠の焼きそばは、ごはんとの相性が抜群なんです。炭水化物と炭水化物を一緒に食べることに抵抗のある方もいらっしゃるでしょうが、だまされたと思ってぜひともやってみてほしいです。ウチの焼そばは、つるつるとのど越しを楽しむ麺ではなく、むしろ「おかず」です。具体的には、焼そばと唐揚げの組み合わせを「定食」でご注文いただき、蒜山味噌のみそ汁と自家製漬物を挟みつつ味わうのがおすすめです。たっぷり食べて、おなかいっぱい、幸せになっていただければ僕らも嬉しいです。

 

焼きそば、から揚げともに持ち帰り可能。お昼に食べて、さらに持ち帰るのもおすすめ。

 

“偏屈店主”としてお客様と良好な関係を築き、地域の未来を変えていきたい

 

悠悠メルマガ登録を促す店内ポップ。取材時に登録し、私たちも特典をいただいた。

 

― 入店時から気になっていたことがあるのですが…お店の各所に「えこひいき」と書いてありますよね(笑)?

 

村岡さん:はい。当店ではメルマガ登録してくださったお客様に対し、えこひいきさせていただいています。僕は偏屈なんで、お客様に対して気まぐれでのサービスはしない。そこで、メルマガ登録してくれる方に向けて明確にえこひいきしてサービスを提供することにしました。何回も来てくださる常連のお客様って、悠悠をごひいきにしてくださっているわけじゃないですか。だったらひいきには、ひいきでお返ししたいと思って。「倍返し」まではできませんが、「施されたら、施し返す。恩返しです!」の心境です(笑)。
初回登録時にはヨーグルトや飲み物などの特典をお渡しし、以降来店時にはお料理の値引き等をさせていただいていますよ。

 

― メルマガはいつごろから始められたんですか?偏屈を自称される村岡さんからどんなメルマガをいただけるのか、いまから楽しみでなりません!

 

村岡さん:メルマガを始めたのは1年ほど前からですね。2020年5月、コロナの影響を受けて悠悠も休業したんです。そのとき、お店に来てもらえない限りはこちらからお客さんに提供できるものが何もないことに気付いて。そのタイミングで通販サイトとメルマガサービスのお話をいただき、お店に来ていただけない状況でもお客さんに何か届けたり、コミュニケーションを取るためのツールとして始めました。

 

 

悠悠 メルマガ登録画面
お店横の待合いスペースには木で作られたメルマガ登録用のQRコードも。悠悠メルマガへの登録は、上記URLより可能。お客さんにとって損のないシステムなので、登録してみよう!

 

 

メルマガは、販促や売り込みよりも、こちらの想いを知っていただける内容を心がけています。
いろんな考え方があるとは思いますが、お店とお客様は対等な関係でありたいと僕は願っています。お客だから上、お店が下というのでも、その逆でもなくて、人として互いに尊重し合える世の中になったらいいなぁといつも思っています。だからお客様に媚びることはしませんし、時に忖度なしの本音や苦言も書くことがあります。中には気を悪くする方もいらっしゃると思いますが、「こんな偏屈な店だけど、よかったらどうぞ」という気持ちで書いています。(笑)

 

それをわかっていただいた上で訪れるお客様が増えてくれると、一番いいのかなと。

 

― 最後にお店、また村岡さん個人にとっての今後の展望があればお聞かせください。

 

村岡さん:地域の未来が少しでも良くなるように、行動を起こしていきたいですね。近年の蒜山では観光客数・人口の減少が問題視されています。人口そのものが減ってしまっては、いま蒜山にある事業や景色もいずれ守り切れなくなる。この課題を解決しないまま、次の世代へ地域の将来を託すなんてとてもできません。具体的に何をしたらいいのかは正直見えていないのですが、僕にも地域の未来のためにできることが何かあるんじゃないかと思うんです。だから仲間と一緒に地域を、引いては日本全体を明るい方向へ向かわせていければいいなと思います。

 

地域にもおもしろい変革をもたらしてくれそうな、偏屈店主の村岡さん。

 

取材中、何度も「偏屈」と自称された村岡さんに、私が感じた印象は「実直さ」でした。

 

堂々とえこひいきをするのも、お店のために試行錯誤を繰り返すのも、惚れ込んだ味と訪れてくれるお客さんへのストレートな想いゆえではないでしょうか。

 

村岡さんのお人柄、創業当時から変わらぬ暖かなお店の雰囲気は、看板メニューであるひるぜんの焼きそばととりのから揚げを食べれば、きっと体感できるはずです。

 

悠悠に伝わる家庭の焼きそば、から揚げが食べてみたくなったら、ぜひお腹をぺこぺこに空かせてお店を訪れてみてください。

 

混雑を避けたいなら平日遅めの時間や雨の日、12月以降の冬季がねらい目だそうですよ。

 

悠悠 メルマガ登録画面

悠悠 Instagram

 

取材・文:灘岡もえ

岡山県北で
はたらく
くらす
かえ~る人