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明日の自分は今日の自分がつくる

前編株式会社オリジナルキューチ 

豊福 祥旗

奈義町

岡山県にある、株式会社オリジナルキューチ 豊福 祥旗 - 岡山県北の求人情報サイト「いーなかえーる」さんに、お話を聞いてきました。

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1牛の体重は1日1キロくらいずつ増える!?

丸尾

豊福さんは、Original Quchi(オリジナルキューチ)を運営されていますが、いわゆる“畜産家”と言えばよいでしょうか?

豊福

はい、“畜産”です。一番大きな括りでいうと“農業”ですけど、農業ってすごく広くて、それこそ食べ物でいうとお米から部屋を彩る花まであります。例えば他にも林業なども農業の一部になりますし、すごく広いんですよね。さらに農業の中を細分化していくと、本当に大規模から小さい農家さんや、自然栽培から大量作物までいろいろあります。
僕が実際に行っているのは、農業の中の畜産業になります。

丸尾

「なぎビーフ」と呼ばれる牛を育てられているということですが、株式会社オリジナルキューチはどういった会社なのでしょうか?

豊福

もともと豊福牧場が前身です。大体1950年ぐらいから牛を飼い始めることでスタートしました。そこから50数年、個人牧場としてやってきたんですけども、それを法人化したのが株式会社オリジナルキューチです。

丸尾

オリジナルキューチは何頭くらいの牛を飼育されているのですか?

豊福

オリジナルキューチ自体は大体170頭ですね。すべて食用牛です。

丸尾

1頭の牛を育てるのに、どれぐらいの期間を要しますか?

豊福

品種や飼い方によって違いますが、大体2年から3年が1つの目安です。

丸尾

2、3年であんなに大きくなるんですか!?(驚)

豊福

そうなんです。牛を育てる上で、1つの生産性のテーマがあって、「1日1キロずつ増やしていく」というのがあります。これをデイリーゲン(D.G)と言いますが、えさを食べさせることによって、1日1キロずつ太らせていくというのが目安としてあるので、出荷するときは、大体800キロぐらいになります。

丸尾

単純に計算すると、2年で365×2キロですからね(驚)
育てられている牛はどういった特徴があるのですか?

豊福

奈義町で育てている牛で、“なぎビーフ”というブランドがありまして、大体これが25年ぐらい前につくられました。

牛の特徴としては、黒毛和牛といって、日本の四大和牛というのがあります。皆さん黒毛和牛というのしかあまりイメージないと思いますが、黒毛和種、赤毛和種、無角、短角牛という4種類がいます。そのうち黒毛和牛というのと、あとは交雑種という牛も一緒に飼っています。

交雑種とは単純に言うと、お母さんがホルスタイン、お父さんが黒毛和牛の掛け合わせたハーフの牛みたいな感じですね。一般的には、あまりホルスタインを食べるというイメージはないと思うんですけど、実は皆さん必ず食べていると思います。ホルスタインは荒々しいところがあるし、肉々しさと、黒毛和牛の繊細さが両方楽しめる交雑種です。

2Quchi(キューチ)とは、“究極の地産地消”

丸尾

さらにこのQuchi(キューチ)というなぎビーフのレストランを岡山市内に出されているんですけども、これはどういった思いでされていますか?

豊福

Quchi(キューチ)というのは、僕が就農をして9年、今年でもう10年目なのですが、農業を始めるときに少し疑問に感じていたことがあります。

農業って今、どういうふうに物をつくっているかわかりますか? どういうモチベーションというか、どんなものをつくっていこうみたいなことを農業者が思って生産していると思いますか?

丸尾

農業って、あまり利益を出そうとすると難しそうで、とりあえず利益が上がるように、というイメージがあります。

豊福

それに近い感じになっていると思います。根本にあるものが、「おいしいものをつくる」ということですが、お客さんが嬉しいというか、おいしいと言ってくれるものを目指すのではなくて、今市場で高く売れるもの、こうすればよく見えるとか、よく売れるとか、そういうものを目指してつくろうとしています。
これはもう資本主義の中では仕方のないことかもしれないのですが、それは僕ら牛業界も同じことが言えていて、お客さんがおいしいと思うものをつくるのではなくて、市場に高く売れるものを目指してつくるようになっているんですね。これは例えばどんなものかというと、形がきれいとか、色がきれいとか、細かい霜降りが入っているとか、それはイコール味と直結していないのですが、要は格付するというか、ランクをつけるときにわかりやすいですよね。人間でいうと顔がきれいとか、スタイルがよいとか。それはすごく見た目で格付しやすいじゃないですか。それと一緒で、牛もそういう格付になっているんですよね。
これはイコールお客さんがおいしいと感じるとか、そういうことってあまり優先的に考えていないんですよ。

というのを、ちょっと就農当初から、何か目指すところってこれでいいのかな?という疑問がありました。日本の技術は高いと言うし、それって本当に良いことだけど、それが本当の農業の仕組みにつながっていくのかなというか、このままこれをつづけていっても、本当の農業なのだろうか。だから本当は農業サイドがもっと変わらないといけないはずなのに、それに多分気付けていないんだろうなと感じました。

もちろん、そういうふうに考えるのは仕方ないことだと思うんですね、さっきも言ったとおり。だってそれで生活成り立つし、それで当たり前なんだから。でもそれを僕は気づかせてもらったので、それに気づけたならば、きっちりとお客さんに寄り添えるものをつくっていくようにしたいなと考えました。その延長線で高く売れるものができれば、それを目指していきたいなというので、まず皆さんに食べてもらう場所というのを提供しようと、このQuchi(キューチ)というお店をオープンしていこうというのがスタートですね。その思いとして、Quchi(キューチ)というのは、「究極の地産地消」という意味合いが実はあるんですけど。

僕は岡山県で、すべての飲食店が岡山のものを使ってくれるようになっていけばと思っています。でもそれだけではなくて、生産者として何ができるかというと、多分その先の農業のよさだったり、しんどさだったり、1つの生産物がどうやってできるかや、岡山県のものってこんなものがあって、こんなものがいいんだよ、というのを伝えていくということが、多分僕にとっての使命だと思っています。

そこをきちっとお客さんとキャッチボールできるようなお店にしたいし、いろんな活動をしていきたいので、ただの地産地消じゃない、究極の地産地消というのを掲げて、そういう活動をしていきたいという思いからスタートしたというのが、この名前の由来になっています。

3農業者は技術者。でも、ただ刀を磨いているだけじゃダメ。

丸尾

届け方とかプロセスを見える化することで、受け取り方も変わってくるのかなと思いますね。

豊福

そうですね。今の時代、正しい情報が出ているとは全く思っていなくて。
というのが、昔からなんですけど、例えばテレビCMや広告でバンバン情報が流れるじゃないですか。あれはお金を持っている企業が自分の商品情報をバンバン流し続けていくんですよね。

これって本当は、その一企業にとっては、1つの情報を流し続けているということ、1つの商品を紹介し続けていることだけに過ぎないと思うのですが、これが今年もあった、来年もあった、10年後もあった、50年後もあったとなると、みんなの頭の中で、これがスタンダードになってきていると思うんですよね。

みんなの中に刷り込みで、これがもう当たり前の世界になっていて、例えばここに100円のハンバーガーが1個あって、片や100円の有機栽培を使ったニンジンが1本ある。これはあまり情報がない中で、「さあ、どっちを今日の晩ご飯に選びますか?」と言われたときに、日本全国のすべての人に選ばせると、僕は8割、9割はハンバーガーを選ぶと思うんですよね。

それは見栄でニンジンを選ぶ人もいるし、本当に感度が高くて選ぶ人もいるかもしれないんですけど、僕は建前じゃなくて、多分誰も見ていないところでやったら、ほとんどこっちを選んで食べると思うんですよ。そういう時代がもう当たり前になってきていて、でも、これは仕方ないことで、みんなの頭の中に刷り込んでいる中で、テレビは別に間違えたことを放送していないよねという。

別にこれは間違ってもいなくて。例えば今TPPが来たりして、いろんな話があって、5年後、10年後、どうなるかわからないという中で、じゃ、この100円のニンジンの価値は誰がPRしてくれるの? となると、もう僕たち農業者しかいないんですよね。この価値を本当に伝えられる人って。だって、CMなんか流してくれる人いないですから。僕たちがやることといったら、少しずつでもいいから語るということしかないと思うんですよね。

丸尾

このQuchi(キューチ)という店を出店されたりとか、パンフレットとかの見せ方というところも、いわゆる農業者のそれとは何か違うなと感じます。

豊福

今の農業が広くなっているというのもあるかもしれないんですけど、本当は農業者って技術者なんですよ。僕みたいな人というのは、本当はあんまりいちゃいけないと思うので(笑)。技術人で、職人で。ただその職人も、ただずっと刀磨いているだけじゃダメで、まずそこで何か戦場を用意してあげないといけないし、その戦場に飛び出ていくというのには、やっぱり職人だから、なかなか出ていけないんですよね。だからそういうのを少しでも道筋をつけたいなというのもあって、旗振りじゃないですけど、そういう形を買って出ているようなところもあります。

農業者も変わらないといけないし、その変わるために、周りの全体も変えていかないといけないしという、両輪でという形にはなるかなと個人的には思います。

4凍らせない保存の技術。長期低温熟成。

丸尾

Original Quchi(オリジナルキューチ)での熟成の仕方とか、そのあたりも開発されたりしていますよね?

豊福

そうですね。最初店をするときに、もちろんなぎビーフは別に熟成をかけなくても十分おいしいし、自分で育てたお肉なので自信はあります。だからこの熟成をまず最初にやろうと思ったわけじゃなくて、まずはお肉を冷凍させたくないなと思ったんです。

なので、うちの店舗やこっち(岡山県勝田郡奈義町)のQuchi+(キューチプラス)から出すお肉は、全部冷凍させないんです。ただ、冷凍させない冷蔵保存って、45日ぐらいしか賞味期限がないんですね。

賞味期限の基本は45日になって、これを解決しようと思うと、やっぱり冷蔵技術をちょっと学ばないといけないので、いろいろと学ばせてもらっています。僕はもちろん生産からしているので、お客さんにおいしいものを届けたいというか、間違いのないものを届けたいと思うと、どうしても冷凍というのはしたくなかったので。

そうなってくると、冷蔵の中で、保管技術を伸ばすということができないのかなというのを、まず考えていくスタートの中で出会ったのが、氷温熟成という方法だったんです。氷温熟成というのが、熟成の技術ではなくて、一番最初に言ったように、保管する技術なんですよ。

米子に氷温協会というのがあって、そこに何回も足を運んだんですけど、その中で、この氷温というのがどんなものかというと零度から零度以下になると、食品は凍り始めると思うんですけど、水だったら凍るのは零度ですね。

いろんな食品があるんですけど、大体零度からすぐ凍り始めるわけではなくて、実はちょっとタイムラグというか、凍り始める間の時間というのがあります。例えば野菜でトマトとかだったら、大体マイナス1度、ホウレンソウだったらマイナス0.7度、それと同じように、お肉が大体凍り始めるのが大体マイナス1.5度。

丸尾

マイナスゼロから結構まだ大丈夫なんですね(驚)。

豊福

零度以下なんですけど、その食品が凍らない温度域のことを「氷温」という形で制定しているようで、お肉の場合は、零度からマイナス1.5度の間だと凍らないんですね。その温度域を正確に保ってやることによって、要は雪かぶり大根とか雪かぶり白菜とか、そういうのを聞いたことないですか? あれと同じように、低温の決まった温度域でずっと置いてやることによって、細胞の動き自体を緩やかにしてあげるんです。

肉の細胞自体の防衛本能に働きかけて、凍らないようにするために、不凍物質をだすようにする。単純に言うと熱を発生するんですね。なので、お肉の場合は、たんぱく質を分解させてアミノ酸に変化する過程で熱を発生して、アミノ酸が旨味成分に変わっていく過程で旨味を増していく。

そのかわり、細胞の動きを抑える――と同じように、菌の動きとかも抑えるので、菌の繁殖は抑えて保管は延びるという。それをうちの場合は長期低温熟成という形で熟成にもなるという。だから長く保管もできるし、低温で熟成にもなっていくというのがうちの方法なんです。

なので、通常の賞味期限が例えば45日となったものを、例えばその倍ぐらいに延ばすことができたりというのを実現しながら、その過程でおいしくなったものを皆さんに提供するという形をとっています。

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