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自然と共生し、未来の健康をつくっていく。

前編株式会社山田養蜂場 代表取締役社長

山田 英生

鏡野町

株式会社山田養蜂場の代表取締役社長 山田英生さんにお話を聞きました。

 

#顧客目線の商品開発 #健康とは

#企業の社会的意義 #自然と共生

#デジタル時代だからこそ大切なこと

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1養蜂家からミツバチ製品のメーカー、販売者に

丸尾

山田養蜂場は、地域はもちろん全国的にも広く知られた、ミツバチ製品などの研究・開発・製造・販売などをされている企業であり、そして通販事業をメインとして大きな事業をされています。事業を立ち上げてこられた今までの道のりについて教えていただけますか?

山田

もともと私は“養蜂場”の後継者として生まれました。大学を卒業後、サラリーマンを3 年間やった後、この鏡野に帰ってきて養蜂場を継ごうとしたのですが、ビジネスとしては“養蜂場(蜂蜜あるいは蜜蝋や花粉をとるためにミツバチを飼育する農業)”の経営というのは厳しいものでした。ビジネスとして成り立たせるためには、農家ではなくて、養蜂生産物を製造したり、販売する“メーカー”そして“小売事業者”にならざるを得なかったのです。

丸尾

もともと営まれていた養蜂業を主とするのではなく、ミツバチ関連の製品を製造し、販売していく製造直販を事業の軸にされたということですね。

山田

はい。小売事業者としての道を探っていく中で(その後、通信販売という形を確立していくのですが)、昭和 58 年に郵便局の「ふるさと小包」が始まり、「産直(産地直送)」という言葉が一般に知られるようになりました。各地域の産物を郵便小包として届けることができるものです。ふるさと小包第1号の時から、当社の蜂蜜を出品していました。

 

また、それ以前から父が百貨店の催事で蜂蜜を販売していた経緯があり、「おいしかったからあの蜂蜜がほしい」と言っていただける通信販売のお客様が、全国に約 2,000 人いらっしゃいました。その方たちのデータベースを基に、会社を通信販売という形に少しずつ変えていったのです。

丸尾

その当時、それまで行っていなかった通販事業への事業転換はとても大変なことですね。

山田

そうですね。はじめの頃は約2,000 人といっても実際に常時商品を購入いただけるのは、200 人〜300 人ぐらいの方々でした。まず私自身が、当時、日本に初めて伝わってきたパソコンでデータベースを作るところからスタートし、通信販売の真似ごとを始めました。結局それを 5 年ぐらい地道にやりながら、一方では、養蜂の仕事や、養蜂して集めた蜂蜜やローヤルゼリーを百貨店や、スーパーなどに卸す仕事をしていたのです。

 

しかし、そうした中で昭和 63 年に当時の社長である父が脳梗塞で倒れ、さらにその2日後に自宅が火災で全焼してしまいました。その 2 つの大きな出来事が突然発生し、そのことをきっかけに、真剣に将来の自分の事業のことを考えざるを得なくなったのです。

2お客様と直接つながる、通販事業を伸ばす決意 

丸尾

それは事業としても、家庭的にも、とてつもなく大きな出来事ですね。そのような大変な時に、通販事業の立ち上げが重なって、いかがでしたか?

山田

通信販売は、直接お客様とやりとりしますよね。卸(おろし)の仕事というのは、問屋さんを通じてですから、お客様の声を直接聞くことはなかったのです。一方で昔から行っていた百貨店での催事の仕事や、通信販売の仕事だと直接お客様とやりとりをしますから、生のお喜びの声や、批判の声を聴くことができ、そのことをとてもうれしく感じていました。自分としては、お客様とつながった通信販売の仕事はものすごくやりがいがあることだと感じましたね。

丸尾

お客様と直に接することは、本当に大きなやりがいを感じられますよね。

山田

やっぱり人生を通してやる仕事であれば、やりがいのある仕事でないといけないと思いました。自分がその仕事に“誇り”を持つことができて、関わる人にも喜んでいただける仕事だともっと良いですね。父が倒れた後でしたから、尚更人生の大きな転機だと感じていました。これから先の自分の仕事をどうしていこうかと真剣に考えていた結果、自ら決めた判断です。ただ、通信販売といっても、全国に私のような養蜂家で、通信販売で成功した実績を持つ人はだれも居ないし、当時は、まだ小さな売上の通信販売が、会社にとって本当に力を入れて良い事業なのか否かも分かりませんでした。

 

だから先ずは、当時一千万円にも満たなかった通信販売をさらに伸ばしていくことを、自分にとっての大切なミッションにしようと決めたのです。もともと私自身あまり一般的な営業活動に向いている性格ではないと自分では自覚していました(笑)。お世辞をいうのが嫌いで、そういう上手な会話もできないので、誠実に直接お客様とやりとりする仕事の方がよいと考えたのです。そのあたりの適性からも通信販売を本格的にやっていこうとの決意につながったのかも知れません。

 

そして 3 年ぐらいで、全体の 1 割しかなかった通信販売の売り上げが、全体の 2 分の 1 を占めるぐらいになりました。通信販売の売り上げが既存の売り上げを超えた頃から、自分でもこの事業に自信が出てきて、その勢いがどんどん加速していきましたね。

3健康な状態を、根本的につくるということ 

丸尾

実は、私も山田養蜂場のこのサプリメント(ノンアルツBee)を少し前から購入しております。経営という仕事をする上で、判断力とか記憶力が大事だと感じて。私自身今39歳なのですけど、ちょっと琴線に触れるものがあって、こちら飲ませていただいています。商品開発の経緯はさまざまあると思いますが、山田養蜂場がこのような人の琴線に触れるような商品を開発していけるのは、どうしてでしょうか?

山田

ノンアルツ Bee を飲まれているのは、素晴らしいと思います。ノンアルツ Bee はプロポリスを中心に、人の認知能力を向上させる機能性を持った素材を、厳選して配合しています。日本でも初めて認知症に影響している4つの認知能力の改善を人試験で証明した、自信の商品です。もちろん、私も毎日飲用しています。

 

さて商品の開発についてですが、父が倒れて自宅が全焼した、そのときから 3 年ぐらいの間に考えたことが全てその後の商品開発や事業の基礎となりました。ミツバチを飼う養蜂家は、地球環境にとって、どの様な意味があるのか?ミツバチ産品を製造販売するということは、人の社会と私たちの健康にとってどのような意味があるのだろうか?と考えました。

 

蜂蜜やローヤルゼリーというミツバチ産品は、人類が古来より自らの健康のために摂取してきた天然物であり、一時的に不快な“症状を改善する”のではなくて、免疫に作用して、“健康になろうとする力をサポートする”食品です。

数々のサプリメントや健康食品、化粧品を開発し提供(写真は一部の商品)。
丸尾

「症状を抑える」と、「健康になる」ということは異なるものですね。

山田

はい。その通りです。一般的な医薬品は、病気の不快な症状を一時的に改善するためには非常に役立ちますが、根本的に健康を創り出す目的のものばかりではありません。例えば一般的な風邪薬は、せきや発熱、鼻水などの我慢できない症状を一時的に抑えるために飲用しますが、ある研究では、風邪自体は平均して 3 日ぐらい長引くという結果もでています。

 

でも、そのせき、発熱、鼻水などの症状というのは、病気を治すために人間の体が自然に引き起こすものです。咳は呼吸を通じてウイルスをのどから外に出そうとする働きですし、発熱するのも、菌を熱によって殺そうとする働きですよね。

 

例えばブラジルの試験では、コロナウイルス感染症の重症者にプロポリスを与えると、3日から4日早く退院できたという結果が出ています。そういう本来の自然治癒力を高めていくことこそが、私たちが取り組むべき本質的な健康観ではないかと思うのです。

 

本来、健康な身体の状態は、生活習慣や食習慣などの日常生活によって、自ら創り出していくべきものでしょう。病気になってしまうから薬を飲むのですが、そもそも病気にならないよう食生活や生活習慣を続けていくべきです。そして食事で補えないところを、健康食品などを使って賢く補うことが大切なのです。そして、私たちは、その人が健康になるためのサポート役なのだと気が付いたのです。

本社エントランスに並ぶ、山田養蜂場の商品。蜂蜜、サプリメント、化粧品まで多くの種類がある。
丸尾

確かに私たち自身、病気を治すために薬を飲んでいるイメージをもってしまっていますね。

山田

そうですね。そしてそのように考えると、ミツバチ産品は「古来より人類が自らの健康のために摂り続けてきた、安心できる天然物の代表なのだ」と定義できました。ただ、蜂蜜にしても、ローヤルゼリーにしても、それからプロポリスや花粉などにしても、健康によいとは分かっているけど、何が「よい」のかというのは、当時はまだよく分かっていなかったのです。

 

私は当時、自分でそれを一つ一つ研究して、解明していこうと考えました。先ずは、ミツバチ産品に関する世界中にある知見を集めてみました。そして、それでも補えない部分は自分で調べるしかない、そう思ったのです。そうやって様々なミツバチ産品の機能性についての研究開発に力を入れていきました。そして、研究によって明らかになった様々なミツバチ産品の機能性を活かした、その機能性が発揮できるサプリメントなどの開発をしてきたのです。

4天然物の有用性を明らかにする研究に力を注ぐ 

丸尾

根本は人が病気にならない体を作っていくような、「本質的に健康になる」ということにスポットを当てているのですね。そういった機能性の研究に力を入れられるようになったきっかけがあるのですか?

山田

私には、2 歳違いの妹がおりました。その妹が先天性の心臓疾患を持って生まれてきたために、両親は私が子どもの頃から非常に健康に対して気を遣っていたのです。当社がローヤルゼリーの生産と販売をかなり昔から手掛けていたのも、両親が、妹の健康のためにと、採集を始めたことがきっかけなのです。

 

そのように幼い頃から、食物が持っている機能性について、人一倍関心を持つような家庭環境があったのだと思います。

 

例えばローヤルゼリーは、半世紀以上前から人の体に良いと言われてはいましたけど、その原因となる物質が何なのかがよく分からないので、Royal の頭文字を取って「R 物質」と呼ばれていたんですね。その R 物質が例えば若返りや免疫力を上げることに効果があるんだろうと言われていました。しかし、物質としてはずっと謎とされていたわけです。私はその R 物質の謎を解き明かそうと決めたのです。

 

長年の当社の研究によって明らかになったローヤルゼリーの秘密とは、ローヤルゼリーの中に「デセン酸」と「デカン酸」という二つの脂肪酸があって、「デセン酸」は幹細胞を刺激することによって、細胞の若返りを促進しているということが分かりました。幹細胞とは、すべての細胞のもととなる赤ちゃん細胞だと思ってください。これはミツバチだけでなく、人細胞でも活性化が促されることを確認しております。

 

もう一つの「デカン酸」は、免疫に影響している脂肪酸で、この「デカン酸」によって、ミツバチは免疫をコントロールしているらしく、人が摂取することで免疫力が高く維持できるということが、研究により明らかになっています。ミツバチにとってのローヤルゼリーは、人間でいう母乳に相当するもので、ローヤルゼリーを赤ちゃんから、大人になるまで、一定量を摂取し続けることで、自分たちの健康状態を良く保っていたのです。

山田養蜂場の本社敷地。みつばち健康科学研究所棟の側に並ぶ蜂の巣箱。
丸尾

さきほどスタッフの方に、コロナ禍でお問い合わせや引き合いが増えていると聞きました。人々の健康意識が高まり、自然由来のものを本質的に求めているということでしょうか。

山田

そうですね。製薬会社は特許で独り占めできる、他の会社にまねできない薬をつくりたがります。

 

だから既知の物質の中で有効性が発見されたとしても独占できませんから、私たちが行っているような天然物の研究への投資はあまり行われないのです。そのためミツバチ産品の有用性というのは、この 50 年〜100年の間、それほど研究をされずにいたのです。

 

しかし、長い歴史の中で、ずっと人間の体が摂取し続けてきたものということは、安全性が確立されたものであるとも言えるのです。

5人の健康をつくることが、天職であり使命

丸尾

それだけ人の健康づくりを追い求められるのは、やはり病気で生まれた妹さんの存在が大きいのでしょうか?

山田

その通りです。私が 16 歳のときに亡くなった妹がいたからです。妹は先天性の病気をもって生まれてきたために、妹の健康こそが私たち一家の目標でした。

 

その妹が健康な身体を取り戻せるはずの手術により亡くなってしまったことから、私たち家族は人生の目標がなくなってしまったのです。それ以降、空虚な気持ちをずっと感じていて、「何のために妹が生まれてきたのか」とか、「何のために病気の妹が一家の中にいたのか」というのが、ずっと自分の中での問い掛けでした。

 

そのような中、私が 31 歳のときに父が倒れて、自宅を全焼する火災に遭い、「何のために生きているのか」、「仕事とはどういうものか」ということを考えざるを得なくなったのです。

 

その時、深く悩んだ自分自身の心に浮かんだのは、妹を健康にしたいとの想いで懸命に娘を育てていた両親の姿でした。その両親の姿から、「仕事とは、必ず誰かのために、役に立つために存在している」のであり、「人にはそれぞれ使命がある」ということを確信しました。そして、自分の人生における使命とは何かと考えた結果、「自分はこれまでの経験から、他の人より少し人の健康のことについて考えることができる」、そのことが強みだと。

 

だから、自分はミツバチ産品を通じて人の健康に貢献していく仕事が天職、与えられた使命であろうと意識するようになったのです。その使命を意識したことが、大きな原動力になって、さらに、ミツバチ産品をどこまでも突き詰めて研究していくことに繋がったと思います。

620年の研究を生かし、さらなる商品開発を

丸尾

山田養蜂場としてこれから新しく取り組んでいきたいこと、今進めていることなどの、未来に向けての話はありますか?

山田

先ほどお話ししたように当社では 20 年以上に亘って、研究開発に力を入れてきました。蜂蜜、ローヤルゼリー、プロポリス、花粉、それからミツバチの中にいる乳酸菌やビフィズス菌まで、さまざまなミツバチ産品を研究してきた結果、世界中の研究機関が行った過去 50 年、100 年のミツバチ産品の研究とほぼ匹敵する、またはそれを上回る規模の研究の成果が出ていると感じています。ですから、その結果を活用して、今後さまざまな新規の機能性商品の開発につなげていこうと思っています。

 

研究結果の一例としては、蜂蜜の咳止め作用があります。昔から風邪をひいたときには蜂蜜レモン湯を飲むのが良いと伝統的に言われてきました。実は蜂蜜の中に咳止めの物質が含まれていて、その微量な物質に鎮咳作用があるということも明らかになったのです。

 

蜂蜜の中からその物質を抽出して、同定し、将来的に咳止め作用のある蜂蜜が機能性食品として生まれる可能性がありますね。

 

またミツバチの体内やミツバチの訪れる花、巣などから、乳酸菌を 179 株、ビフィズス菌も 116 株、発見しております。その乳酸菌とビフィズス菌を一つ一つ培養して、機能性を確認して、幾つかの機能性が見つかっております。例えば蜂蜜をその乳酸菌で発酵させたところ、非常に保湿作用を高めるような物質ができあがりました。これを蜂蜜発酵液として、化粧品の原料に使い始めています。このように研究成果を活用した商品が、今後どんどん出てくる予定です。

自然と共生し、未来の健康をつくっていく。

  • 取材日:2021年11⽉9⽇
  • 撮影地:株式会社山田養蜂場 本社 (岡山県苫田郡鏡野町)
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